国立研究開発法人情報通信研究機構
2017年4月18日
海外からの来訪者増加に伴う救急現場での外国語対応の増加を踏まえ、昨年4月より、総務省消防庁消防大学校消防研究センター(以下消防研究センター)及び国立研究開発法人情報通信研究機構(以下NICT)は、「消防用多言語音声翻訳システムの実用化」の共同研究を推進しています。このたび、その成果として、NICTが開発したスマートフォン向け多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra(ボイストラ)」をベースにした救急隊用音声翻訳アプリ「救急ボイストラ」を開発、全国の消防本部に対して提供を開始することとしました。
詳しくは総務省消防庁からの報道発表資料をご参照ください。
経緯
従来、救急現場で、外国人対応の際に用いられていたコミュニケーションボード(指さしシート)では、対応言語、対応項目数が限られる一方、一般的な音声翻訳アプリは周囲の環境音による誤認識、救急現場で必要とされる語彙の不足による誤翻訳があり、外国人対応に時間を要していました。
本共同研究では、医療用語を追加して自由文入力の音声翻訳精度を高めるとともに、札幌市消防局の協力もいただき、救急隊の現場業務の多くの会話をカバーできる定型表現(46文)を追加した救急隊用のアプリを新たに開発しました。実フィールドで検証した結果、従来に比べ、外国人傷病者に対してスピーディーかつ円滑にコミュニケーションが図れるようになり、実用レベルに達していることが確認できましたので、このたび「救急ボイストラ」という名称で、全国の消防本部への提供を開始することとしました。
開発のポイント
- 救急現場で必要となる辞書/対訳例文の充実
(「総務省多言語音声翻訳技術の研究開発及び社会実証」事業における防災分野の実証成果の一部を活用しています) - 救急現場で使用頻度が高い会話内容を「定型文」として登録(15言語)
- 定型文での質問/確認に対して外国人傷病者が返答できるユーザインタフェースを追加
今後の展開
すでに本年2月より、札幌市消防局にて「救急ボイストラ」の運用を開始していますが、今後、各消防本部の要望に基づき、消防研究センターを通じて、順次提供していきます。
また、今後もグローバルコミュニケーション計画の実現に向け、ショッピング、交通、医療などの分野での多言語音声翻訳技術の更なる精度向上のために研究開発を推進し、社会実装を促進していきます。
「VoiceTra」は、NICTの登録商標です。
【参考】“VoiceTra”に関する過去の報道発表:
- 2015年10月22日 「多言語音声翻訳アプリ“VoiceTra”(ボイストラ)が進化 ~訪日外国人が言葉で困らない社会を実現するためのアプリとして展開~」
https://www.nict.go.jp/press/2015/10/22-1.html
利用シーン
本件に関する問い合わせ先
先進的音声翻訳研究開発推進センター
企画室長 内元 清貴
Tel:0774-98-6810