高度通信・放送研究開発委託研究
研究評価 > 平成28年度 終了評価
平成28年度委託研究終了評価結果(概要)
採択 番号 |
課題名 | 研究 期間 (年度) |
受託者 (◎印: 代表研究者) |
主な評価コメント | 評価結果 |
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160ア01 | エラスティック光アグリゲーションネットワークの研究開発 課題ア エラスティック光リンク技術 副題:多様なサービス、多様なネットワーク構成を実現する伸縮自在光リンク技術 |
H24 | H28 |
◎株式会社日立製作所 |
エラスティック光リンクの基本技術として、「エラスティック」かつ「プログラマブル」の機能を備えた光送受信技術および光スイッチ技術について、「プログラマブル」機能を3 年目までに優先的に取組み、技術的難易度の高い「エラスティック」機能は最終年度までに実現する段階的で着実に計画を進め、最終的に課題イを含めた総合的実証実験において実現性を確認して、最終目標をクリアしている。一部には目標を上回る成果もあった。標準化や相互接続性についてもよく検討されており、知的財産に関しての取組みも十分であり登録数も多かった。2020 年東京五輪開催を機にした5G-モバイル、多チャンネル高精細映像サービス、超高速Wi-Fi スポット、あるいはNG-PON2 などを対象に見据えて社会への波及を目指しており、IoTなどの環境にも応用が期待できる。また、災害時のライフライン維持への貢献やNG-PON2 の次のアクセス系への展開など、本研究開発の波及効果は高いものが期待でき、本課題は優れた研究開発であったと判断できる。
なお、本課題の内容が技術的に高度なことから、一般の人にも分かり易く国民の利益につながるメリットという観点から本研究開発の成果をアピールすることを考える必要があると思われる。
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S |
沖電気工業株式会社 | |||||
古河電気工業株式会社 | |||||
株式会社KDDI総合研究所 | |||||
160イ01 | エラスティック光アグリゲーションネットワークの研究開発 課題イ エラスティック光メディアアクセス技術 副題:多様なサービス、多様なネットワーク構成を実現する伸縮自在光メディアアクセス技術 |
H24 | H28 |
◎日本電信電話株式会社 |
エラスティックな帯域を持つ光パスを駆使して、平常時には効率性に優れ、災害時にも物理リソースを組み替えてライフライン維持に資するメトロ・アクセス統合光ネットワークを目指して、「エラスティック」、「プログラマブル」、「アグリゲーション」という3つの特長を持つエラスティックネットワークの実現を目標とし、3つの機能のうち、「アグリゲーション」機能と「プログラマブル」機能を優先的に検討し、最も技術的難易度の高い「エラスティック」機能を後回しにすることで着実で実行性の高い計画を進め、最終目標をすべてクリアしている。一部は目標を上回る成果であった。課題ア、イ間の統合実証実験では、障害復旧シナリオを想定し、光パス切替えを(パラメータを動的に変更しつつ)10秒以内で実施しており、世界に類を見ない成果である。国際標準化への貢献もあり、知的財産に関しての取組みも十分で登録数も多かった。
2020年東京五輪開催を機にした5G-モバイル、多チャンネル高精細映像サービス、超高速Wi-Fiスポット、あるいはNG-PON2など多様なサービスにおける基盤技術として有用であり、IoTなどの環境にも応用が期待できる。また、災害時のライフライン維持への貢献も本研究開発の波及効果として高いものが期待でき、本課題は総合的に優れた研究開発であったと判断できる。今後、成果や波及効果について幅広く世界にアピールするとともに、実用化・製品化へさらなる展開を図られんことを期待する。
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S |
沖電気工業株式会社 | |||||
株式会社日立製作所 | |||||
学校法人慶應義塾 | |||||
16301 | 光・量子情報通信用超伝導単一光子検出システムの小型化技術の研究開発 副題:小型化2K冷凍システム |
H24 | H28 |
◎住友重機械工業株式会社 |
極低温を手軽に得られる小型高性能な冷凍機システムを実現したことは、実用に近いレベルにあるインパクトの大きな成果であって、冷凍機システム自体の開発目標に対する達成度は90%と高く評価できる。一方で,本来の目的であるSSPDを搭載しての実証実験は十分なものではなく(達成度〜50%)、両者を総合した全体としての目標達成度は75%程度、4段階評価ではBと評価せざるを得ない。
研究期間内に全体目標を達成することはできなかったが、学術的にも産業的にもインパクトの大きな成果になることは疑いがないので、本研究開発で投入した資金に見合う成果を得るためにも、今後も冷凍機開発グループとSSPD開発グループとの間で密接に協力しながら継続して研究を進め、できるだけ早い時期に全体目標が達成されることを強く期待したい。
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B |
16501 | 電磁波を用いた建造物非破壊センシング技術の研究開発 副題:建造物評価用3次元イメージングレーダ技術の開発 |
H24 | H28 9月 |
◎国立大学法人東北大学 |
我が国の特殊性(自然災害の多発、また木造構造壁の多さ)に基づき社会の安全安心を推し進めるために計画された研究である。当初、震災直後の建物評価を目的に始められたが、その後実施体制のなかでの調査により災害に備えるための古い家屋の強度診断の面も加わり、より社会的な有用性が増した。評価・診断装置の開発のみならず、装置の扱いやすさに対しても、随時必要な体制を整えながら研究が進められた。大型の実証実験施設の準備、及びそれを用いて開発された接触型のレーダー装置は、当初の設定以上の性能のものが得られており、木材構造壁の検査・評価に十分な実用性を有するものと考えられる。今後実地での運用を行いながらその有用性を広く社会へ報せ、本成果がより役立つような方策が求められる。
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S |
三井造船株式会社 | |||||
16801 | 将来ネットワークの実現に向けた超大規模情報ネットワーク基盤技術に関する研究 副題:ACTION:トランスポ ート、IP、及び、光ネットワークと連携するアプリケーション |
H25 | H28 |
◎国立大学法人電気通信大学 |
急激に発展するサイバー・フィジカル空間で提供される高度なアプリケーションに適用可能なACTIONを日米4大学で共同提案し、代表的なアプリケーションとしてHadoopの応用と遠隔ロボットの制御に対する実証実験を日米のテストベッドで実施して有効性を検証しており、共同研究プロジェクトとしてS評価に値すると考えられる。
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S |
学校法人慶應義塾 | |||||
16802 | 将来ネットワークの実現に向けた超大規模情報ネットワーク基盤技術に関する研究 副題:超大規模モバイルアプリケーションのための次世代コグニティブセキュリティ技術 |
H25 | H28 |
◎国立大学法人東北大学 |
コグニティブセキュリティの技術定義、課題の明確化、課題解決に対する社会的な意義・インパクトなどを鮮明にした上で、必要となる研究テーマ個々のあり方を論じるアプローチが必要であり、現状の成果表現では、当該研究成果の実用化や社会的インパクトが見え辛く、判断が難しい。
別途送付された補足資料において、環境情報(位置情報等)の利用と行動特性の利用による環境特性・個人特性の認知を利用したコグニティブセキュリティ技術の活用と、その性能向上に資する日本側研究成果のマッチングといった概要表現はあったが、まだコグニティブセキュリティの研究骨子・基本構造等が曖昧かつ不明確であり、超大規模モバイルアプリケーションへの適用に対する必然性の理解が難しい状況である。
例えば、環境情報の集約技術はダイナミックマップの研究分野へ、SNSにおける特徴量分析の強化技術はビッグデータ解析の研究分野へ、データベース精度・鮮度評価技術はモビリティの研究分野へ、といった展開の可能性を感じる研究成果であるため、こうした成果の活用を広く捉え、実用化や社会的インパクトを再考することが必要と考える。
個々の研究成果には、先進的な技術要素が含まれ、3年間の研究活動意義は認められる。また、日・米双方の先端研究を組み合わせた活動を体系化してきたことは今後の研究拡大に貢献すると思われる。
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B |
学校法人慶應義塾 | |||||
日本電信電話株式会社 | |||||
16803 | 将来ネットワークの実現に向けた超大規模情報ネットワーク基盤技術に関する研究 副題:無数の端末を接続するための高エネルギー効率および超高密度無線ネットワークに向けて |
H25 | H28 |
◎国立大学法人東北大学 |
5Gの実用化に向けた研究開発は活発な状況であるが、その多くは無線域を中心としたセルラー技術の革新であり、ネットワークワイドに渡る制御技術の革新は活発とは言えない。
当該研究において示されるとおり、5Gの本格商用化を加速化するためには、高密度ヘテロジニアスネットワーク(HDHN)の実現に向けた課題解決が必要であり、小セル基地局を前提とした自律分散無線資源管理アルゴリズムは次世代モバイルサービスに向けて重要な研究テーマと考える。
本研究期間において、上記アルゴリズムの検証を集中的に行い、実証レベルで成果を出したことは、5Gの本格商用化を加速化する一つの技術革新として評価できる。
ただし、アルゴリズム論まででは学術研究から実用化へ成果展開することは難しく、今後更に提唱技術のグローバルな合意形成、実装のためのデジュール・デファクト双方における各種標準化、PoCから商用へ市場創成の現場となるコンソーシアム活動などが必要であり、研究成果の出口を戦略的に創ることが求められる。
当該研究成果を基盤に、継続した研究開発から実用化に向けた活動を推進し、5Gの本格化に向けた日本の技術競争力強化に繋げていただきたい。
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A |
16804 | 将来ネットワークの実現に向けた超大規模情報ネットワーク基盤技術に関する研究 副題:階層化エラスティック光パスネットワークの研究開発 |
H25 | H28 |
◎国立大学法人名古屋大学 |
当該研究開発において実現したフレキシブル波長群ルーティング、およびフォトニックノードの小規模化・経済化アーキテクチャは、今後更に加速化する光パスネットワークの超大規模化に向け、エネルギー効率利用の課題等含め、重要な成果であると評価する。
ノードシステム生産において実用レベルに達しているものと考えるが、本格商用展開に向けては運用プロセスの革新的な変革が不可欠であり、オペレーションシステムと一体になった実用化を進める必要がある。
基礎・基盤研究としては十分な成果を得ており、今後、実用化に向けた更なる施策を具体化することで、社会的インパクトや国民的利益を得られる成果に進展できるものと考える。
当該研究開発の成果を、日本の国際競争力の源泉とし、グローバルな標準化活動、および社会基盤として浸透させるための(PoCから市場創成に向けた)コンソーシアム戦略等に繋げる市場誘導に力を尽くすよう期待する。
ソフト制御指向のネットワーク運用(SDN/NFVのような分野)技術の研究テーマと組み合わせた取り組みなど、研究成果の実用化出口を広く求めるような継続活動を期待する。
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A |
171A01 | エラスティック光通信ネットワーク構成技術の研究開発 課題A エラスティック超高信頼光NW設計技術 副題:グリーンで高信頼なエラスティックネットワーク設計を実現 |
H25 | H28 |
◎日本電信電話株式会社 |
エラスティック技術の活用により、固定グリッドに比較して30%以上の周波数利用効率向上とネットワーク全体の消費電力の50%以上低減ができるネットワーク設計技術という性能目標を100%達成している。通信キャリア、システムベンダ、大学の三者がそれぞれの強みを持ちよる実施体制がうまく機能しており、マルチレイヤパス連携設計デモを実施するなど、課題内連携も円滑に進められた。外国特許出願数ではわずかに達成できていないものの、性能面での100%の区表達成に加え、学会・展示会等を通じ目標を大幅に超える多数の対外発表で社会に対してエラスティック光パス技術の必要性を喚起しながら研究成果の先導性をアピールしてきており、当初の目標を十分に上回る成果をあげていると判断される。具体的なサービス・製品化及び標準化への布石も意識されており、波及効果も高いものが期待でき、優れた研究成果だと考える。
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S |
富士通株式会社 | |||||
国立大学法人名古屋大学 | |||||
171B01 | エラスティック光通信ネットワーク構成技術の研究開発 課題B エラスティック光ノード・リンク構成技術 副題:グリーンで高信頼なエラスティックノード・リンクを実現 |
H25 | H28 |
◎日本電信電話株式会社 |
エラスティック技術の活用により固定グリッドに比較して復旧性能を従来方式に比べて50%以上向上するという目標を100%達成するとともに、目標を大幅に上回る特許出願と対外発表を実施している。通信事業者と装置ベンダ、大学の連携体制を構築、互いの強みを活かして相乗効果が得られるように実施され、研究開発成果の応用においては、通信装置への導入を見据えた技術開発や国際標準への積極的提案を実施するなど、成果の普及や波及にも積極的であった。特に、国際標準における激甚災害時の復旧能力向上の必要性の国際的コンセンサス向上への貢献は評価できる。これらのことから、当初の目標を十分に上回る成果をあげていると判断され、成果の波及効果も高いものが期待でき、本課題は優れた研究開発だと判断される。
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S |
日本電気株式会社 | |||||
国立大学法人香川大学 | |||||
17701 | メッシュ型地域ネットワークのプラットフォーム技術の研究開発 副題:NerveNetの平時活用および実フィールド実証に関する研究 |
H26 | H28 |
◎日本ユニシス株式会社 |
当初の数値目標はほぼ達成されており、十分な成果が得られている。報道発表、イベント展示はじめ論文、知的財産に関する活動も活発に行っており、高く評価できる。特に、ニーズ調査に基づくアプリケーション、プラットフォームの分析、開発、評価につなげた点で十分な成果が得られていると評価される。また、本研究の開発対象のインフラとなるメッシュ型地域ネットワークについては、NICTで研究開発されてきた技術を効果的に活用しており、相乗効果が発揮されている。ただし、実用化についてはまだ達成できたとはいえず、国際標準化等の海外への発信も十分ではない。今後、国際標準化への提案を含め海外への情報発信、スマートコミュニティの基盤としての全体システムの構築、自治体IoTの実装モデルへの拡張が重要である。
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A |
株式会社フィンチジャパン | |||||
ナシュア・ソリューションズ株式会社 | |||||
国立大学法人東北大学 |
総合評価の評価点 S:非常に優れている A:適切である B:やや劣っている C:劣っている