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航空機搭載用電子走査アレーアンテナの研究開発ストレスフリーな機内インターネットの実現を目指して地上系ネットワーク(NTN)は静止軌道衛星、中軌道や低軌道などの非静止衛星、高高度プラットフォーム(HAPS)、(無人)航空機等を含む通信網であり、広域性や耐災害性といった特徴を有しています。NICTではNTNにおいて移動体に搭載するアンテナとして、衛星軌道位置や運用状況に合わせ柔軟に対応でき、従来の機械駆動型アンテナでは実現が困難なビーム走査及び形成機能を有する電子走査アレーアンテナ(Active Electronically Steered Array: AESA)の研究開発を進めています。■背景スマートフォンやタブレット端末の急速な普及に伴い、Wi-Fi通信を活用した航空機内インターネット接続サービスの普及が進んでいます。2019年9月に、人工衛星、衛星通信、地球観測に特化した独立系のコンサルティング会社であるEuroconsult社が発表した調査報告書「Prospects for In-Flight Entertainment and Connectivity」によると、サービスを提供する民間航空機数は2018年末時点の8,200機から、今後10年間で20,500機以上となり、Ka帯通信衛星を利用する機数も約9倍と大幅な増加が予測されています。このような需要増加に対応するために必要となる航空機に搭載する衛星通信アンテナの高性能化の検討として、NICTではKa帯において航空機への搭載性を損なわず、開口サイズをスケーラブルに変更でき、広範囲のビーム走査が可能なAESAの研究開発を行っています。■航空機搭載用電子走査アレーアンテナの開発概要航空機搭載用AESAの研究開発では、変調方式の多値化により周波数利用効率を30 %以上改善し、周波数の有効利用に資するAESA技術を確立することを目的としています。本研究開発でのAESAのイメージを図1に示します。アンテナの構成は送信と受信で独立し、アンテナは機外のレドーム内に、電源ユニットや制御ユニット、モデムは機内に設置されます。対応周波数帯はKa帯(送信:29.5 -30.0 GHz、受信:19.7 - 20.2 GHz)とし、変調方式は8位相偏移変調(8Phase Shift Keying: 8PSK)以上とします。アンテナの性能指標である等価等方輻ふく射しゃ電力(Equivalent Isotopically Radiated Power: EIRP)及び利得雑音温度比(Gain to noise Temperature ratio: G/T)については既存の通信衛星と8PSKで回線確立できるように目標値を設定します。送信側の軸外輻射については国際電気通信連合無線通信部門(ITU-R)によって行われた2015年世界無線通信会議(WRC-15)にて採択された決議156の規定を満足するように設計します。アンテナ素子配置及び断面構造、走査角の定義を図2に示します。アンテナの基本的な構造は送受信で同様で、アンテナ素子にパッチアンテナを採用し、素子配置は三角配置とし、所望の周波数帯、ビーム走査角度においてグレーティングローブが発生しないよう素子間隔を決定します。走査角については、φ方向は0~ 360 deg.、θ方向は-65~+65 deg.のビーム走査性能を有します。アンテナに励振される振幅及び位相を制御するフロントエンドIC大倉 拓也(おおくら たくや)ネットワーク研究所ワイヤレスネットワーク研究センター宇宙通信システム研究室研究員大学院博士課程修了後、2017国立研究開発法人情報通信研究機構入所。非地上系ネットワーク用アンテナに関する研究開発に従事。博士(工学)。FEATUREアンテナを活用した研究開発Antennas Lead Innovave Researches in NICT非NICT NEWS 2023 No.26

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