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●口径1.5メートルの光衛星通信用のアンテナ●口径34メートルのVLBIアンテナ●ホーン型アンテナ 開口部1.36×1.36 mm、長さ1.79 mm●航空機搭載用通信アンテナ●日米VLBI実験を行った口径26メートルアンテナ「きく9号(ETS-9)」で実証実験を行うことになっています。 もう一つは、テラヘルツ帯の140 GHz・300 GHzといった非常に高い周波数の通信用のアンテナの開発があります。ホーン型のアンテナで、開口部1.36×1.36 mm、長さ1.79 mmという非常に小さなものです。ホーン型は指向性が強いのですが、いくつも並べて電子的に処理することで、色々な角度からの電波を受けることができます。これらのアンテナで、Beyond 5G/6Gに対応した100 Gbps以上の伝送速度を実現したいと考えています。■外部との連携・協力――実用化すれば経済的にもインパクトは大きいですね。門脇 はい。ただNICTだけでは実現は難しいと思いますので、コンソーシアムを作って、メーカーや大学と連携しながらやっていこうと考えています。この分野は海外との競争も激しいので、連携は欠かせないのです。――これまでも、通信の分野は衛星通信など国際間の連携で行われてきたと言えますね。門脇 私がかかわってきた事例を紹介しますと、1997年にインテルサットとNASAの実験衛星ACTS(Advanced Communications Technology Satellite)を使って日米間の高速衛星通信の実験を行いました。ロサンゼルスのソニーピクチャーズと東京のソニーのスタジオを結んで、45 MbpsのHDTVの信号をIP接続で複数回線を使ってほぼリアルタイムで映像編集ができることを確認しました。撮影現場で撮った映像を高速衛星回線でスタジオに送り、編集して現場に送り返す。撮影現場では編集後の映像を見て必要な箇所のみ撮りなおすなど、効率的な撮影ができるというわけです。これはリモート・ポスト・プロダクションといって今では当たり前の撮影技法になっています。 また、アメリカのメリーランド州の米国立医学図書館NLMは「ビジブル・ヒューマン」と呼ばれる人間の身体データをデジタル化した情報で持っているのですが、そのライブラリに札幌医科大学の先生に日本からアクセスしてもらい、人体のいろんな情報を引き出してくる高精細人体断層写真伝送実験なども行ってきました。 また、宇宙天気予報関連では、オーストラリア・カナダ・フランスなどと連携して、我が国周辺の宇宙天気予報のデータをICAO(国際民間航空機関)に提供しています。 また、現在アメリカの太陽観測衛星からの電波受信用として、鹿島に口径7.3 mのパラボラアンテナの建設が進んでいます。■これからのアンテナを使った研究開発――これからのアンテナの姿はどうなるのでしょうか。門脇 Beyond 5G/6Gや更にその先の高い周波数の電波を使った超高速通信の時代がやってきます。スマートフォンのように持ち歩くデバイスは、小型軽量でなくてはなりません。微細なアンテナ技術は欠かせません。さらにもっと小さなIoT機器が地球上のあらゆるところで、通信とセンシングに使われるようになっていきます。そういうデバイスに向けた省電力のアンテナ設計も必要と考えています。 クルマの自動運転も普及していきます。通信しながら動いているので、絶対に事故を起こさないように、確実に通信を維持できるよう制御しなければなりません。すべてのクルマを同時にネットワーク化して管制できる非常に信頼性の高いアンテナとシステムが必要です。――人類を月に送るアルテミス計画が動いてますが。門脇 月を周回するゲートウエイが建設される予定ですし、恒久的な月面基地も作られるでしょう。さらにその先には、火星有人探査などの目標もあります。月や火星と地球を超高速インターネットでつなぐ時代は、そう先の話ではありません。アンテナは無線通信ネットワークの出入口となる重要なデバイスであり、電波は人類全体の共有財産です。 私たちは国際連携をしながら、これからの新しい時代に相応しいアンテナの開発とアンテナを使った研究開発を通じて、世界に貢献していきたいと考えています。3NICT NEWS 2023 No.2

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