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の側面もあります。24時間連続送信を行う関係から、昼夜交代で複数の監視員を配置して、専用回線での遠隔監視も併用しながら、日常の電波と設備の監視制御を行っています。送信機の操作には、第一級陸上無線技術士の資格が必要です。加えて、例年40 kHz局は9月上旬、60 kHz局は10月下旬頃に10日程度かけて、日中停波が必要な送信設備や局舎、アンテナなどの点検と補修を集中的に行い、無線局検査を受検し、送出する電波の品質を保っています。■高光度航空障害灯のLED化   老朽化の進んでいた、おおたかどや山送信所の航空障害灯のLED化の更新を2021年11月から翌年2月までに行いました。従来の航空障害灯は、キセノン電球を使用したもので、塔上の電球交換を毎年行う必要がありましたが、新たに設置したLEDタイプでは毎年の電球交換の必要がなくなり、消費電力も70%以上削減しています。障害灯の更新は、ただ機器を交換するだけのように思えるかもしれませんが、完成までの工程は容易なものではありませんでした。その理由として、作業中の計画停波は、多くの電波時計が時刻合わせをする夜間を避けて日中のみとしていますが、作業員が地上高250 mまで、塔内のはしごを片道1時間以上かけ昇り降りする必要があり、限られた時間内に行う必要があること。そして、山頂の気温は氷点下を記録する日もあり、悪天時や風速10 m/sを超えた場合作業が中止となることがあげられます。このような悪条件が重なり、現場工事の期間延長や停波日の追加など様々な不測の事態を乗り越え、更新作業は完了を迎えました。納入された航空障害灯が正しく動作するか検査することも、私たちの重要な役割です。この写真は、空の明るさの変化に応じて、灯器の輝度を切替する機能確認のために、雪が積もる山中にて、日没を待ちながら撮影した一枚です(図4)。■台風14号土砂災害からの復旧  2022年9月中旬に九州に上陸した大型の台風14号の被害を受け、山の麓からはがね山送信所までを結ぶ5 kmにおよぶNICTが管理する専用道路において、数か所に法のり面めんの崩壊や道路の一部陥没が発生し、人や車が自由に往来できない状況となりました(図5、6)。土砂崩れにより、専用道内での送電線が切断され、商用電源の停電が発生しました。すぐさま、備え付けの自家発電装置が稼働し、送信は継続しました。電力会社の懸命な作業により、発生から2日後に停電は解消され、問題無く標準電波を継続送信できました。幸いなことに、局舎や空中線自体に大きな被害はありませんでしたが、道路が仮復旧されるまでの数週間は、毎日の勤務交代時に、専用道路の一部を徒歩で通行しなければならないなどの影響を及ぼしました。今日までに、道路の仮復旧工事を急ぎ行い、各専門業者、地元自治体や各関係機関及びNICT関係部署のご協力も賜り、この災害のために延期された送信所の定期点検も2か月後の12月に完了できました。■おわりに  標準電波は、短波帯時代を含めると80年以上の歴史のある業務で、「日本の時を告げる電波の灯台」と例えられることがあります。先輩方より受け継いだこの灯火を絶さぬよう、その時代に即した方法を探りながら、継続的で安定した時刻・周波数供給により一層努力してまいります。図4 航空障害灯点灯試験の様子 (おおたかどや山送信所)図5 はがね山送信所 台風被害による道路陥没図6 はがね山送信所 台風被害による法面崩落図3 アンテナの概要図  11NICT NEWS 2023 No.2

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