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安全なデータ利活用技術と量子コンピュータ時代に向けた暗号技術の安全性評価野島 良(のじま りょう)ネットワークセキュリティ研究所 セキュリティ基盤研究室 室長2006年、NICTに入所。情報セキュリティ技術、特にプライバシー保護技術の研究開発に従事。博士(工学)。キュリティ基盤研究室では、耐量子計算機暗号等を含む新たな暗号・認証技術やプライバシー保護技術の研究開発を実施し、その安全性評価を行うとともに、安全な情報利活用を推進しています。■安全なデータ利活用技術暗号化ストレージの利便性を向上させる技術クラウドストレージのようなシステムのプロバイダにとって、エンドユーザのみが暗号化/復号できるエンドツーエンド暗号化(E2EE)でセキュリティを高めると、サーバ側ではデータが見えず、利用者に検索機能などのサービスを提供できないというジレンマがあります。当研究室では、検索可能暗号を用いたセキュアストレージ・チャットシステムの研究を行っています。サーバに保存されたファイルやチャットメッセージは暗号化され、同時に暗号化ファイルに対する検索が可能です。さらに検索するキーワードもサーバには漏ろう洩えいせず、ファイル・メッセージに関する情報が漏洩するリスクを減らすことができます。アクセス制御・改ざん防止技術当研究室では、宇宙機の乗っ取り防止による飛行の安全確保、宇宙機から伝送される飛行状況や学術的・商業的価値の高いデータの保護を目的とした暗号技術の研究開発を行っています。併せて実際の宇宙ロケットを使用しての実証実験を進めており、2021年には機体から地上局への飛行状況の伝送において情報理論的に安全な実用無線通信に成功しました(報道発表2021年8月17日:観測ロケットMOMOv1で情報理論的に安全な実用無線通信に成功(https://www.nict.go.jp/press/2021/08/17-1.html))。またある秘密情報を知っていることのみを証明するゼロ知識証明について、当研究室では、この技術の適用範囲の拡張及び既存方式に比べ、よりコンパクトな証明サイズを可能とする構成方法について研究を進めています。またその応用として、自身がある権限を持つこと(例えばアクセスを許可されたメンバーであること)を自身を特定することなく証明する匿名認証技術の研究開発を行っています。特に追跡可能性/失効可能性と匿名性とを両立する技術や、その応用としてブロックチェーンにおけるプライバシー保護について研究開発を行っています。複数組織にまたがるデータやヘルスケアデータの安全な利活用技術当研究室では、準同型暗号を応用し、それぞれの組織が持つ個人情報などの秘密データを外部に開示することなく、ビッグデータを暗号化したまま安全に解析・検知できるプライバシー保護連合学習システムDeepProtectの研究開発を行っています。この技術の活用先として、複数銀行間にまたがるデータの解析により、マネー・ロンダリング、不正送金、振り込め詐欺などの金融犯罪対策が考えられます。また、ヘルスケアの分野において、研究室ではプライバシー保護の観点で、データ分析前に行う匿名加工における安全性を保証する技術について研究を行っています。さらに、個人データ収集時のセキュリティ・プライバシー対策を個人にとって真にわかりやすく、効果的セ江村 恵太(えむら けいた)〈左〉サイバーセキュリティ研究所セキュリティ基盤研究室研究マネージャー大学院博士課程修了後、JAISTポストドクターを経て2012年NICT入所。暗号理論・暗号応用に関する研究に従事。博士(情報科学)。篠原 直行(しのはら なおゆき)〈右〉サイバーセキュリティ研究所セキュリティ基盤研究室研究マネージャー大学院博士課程修了後、JST CREST 研究員等を経て2009年NICT入所。暗号の安全性評価に関する研究に従事。博士(数理学)。FEATURE誰も取り残さないサイバーセキュリティCybersecurity for AllNICT NEWS 2022 No.56

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