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厳しさを増すサイバー攻撃NICTのサイバーセキュリティへの取組は?厳しさを増すサイバー攻撃NICTのサイバーセキュリティへの取組は?FEATURECybersecurity for All誰も取り残さないサイバーセキュリティ■サイバー攻撃の現状――最近のサイバー攻撃の傾向は?井上 サイバー攻撃はインターネットの黎れい明めい期からありますが、20世紀が終わる頃までは愉快犯的なものが多かったです。それが21世紀に入ると金銭の詐取など特定の目的を持つものに変わってきました。攻撃側の技術はどんどん進歩していますから、守る側も進化していかないといけない。しかし、守る側の人的リソースが足りていないのが現状です。 欧米のように地続きで隣国がある地域では、軍事を含めてセキュリティ問題は重要課題として扱われてきましたが、日本は島国ということもあり、企業も国もセキュリティについて、あまり切実に感じていなかったと思います。 ところが2000年に、サイバー攻撃によって中央省庁等のウェブページが一斉に書き換えられるという事件が発生し、2011年には防衛産業が標的型攻撃を受けました。さらに2015年には日本年金機構が攻撃を受けて約125万件の個人情報が盗まれました。最近特に深刻なのは医療機関への攻撃が目立っていることです。国民の命に関わることであり、生活にダイレクトに響いてきます。 また、ここ数年はコロナ禍でリモートワークが増え、セキュリティの重要性が多くの方に認識されてきたのではないでしょうか。――サイバー攻撃が複雑化・巧妙化していると言われますが井上 無差別型攻撃から標的型攻撃、さらには身代金要求型へと変わってきています。また攻撃側の作業が分業化さコロナ禍によるリモートワークの普及、国際情勢の激変から否応なく思い知らされたサイバーセキュリテイの重要性。情報を守ることがこれほど重要だと理解された時代はないだろう。まさに今こそ情報と通信の専門研究機関であるNICTの技術が求められるときだ。サイバーセキュリティ分野でNICTが行っている取組の最前線について3人のキーパーソンに聞いた。盛合 志帆(もりあい しほ) 〈中〉サイバーセキュリティ研究所 研究所長/ナショナルサイバーオブザベーション センター 研究センター長(兼務)大学卒業後、日本電信電話(株)、ソニー (株)を経て、2012年にNICT入所、2021年から現職。暗号、情報セキュリティ、プライバシー に関する研究開発に従事。博士(工学)。井上 大介(いのうえ だいすけ)〈左〉サイバーセキュリティ研究所 サイバー セキュリティネクサス ネクサス長/(以下兼務)サイバーセキュリティ研究室 室長/ ナショナルサイバーオブザベーションセンター 研究統括/ナショナルサイバーオブザベーションセンターサイバーオブザベーション運用室 室長大学院博士課程後期修了後、2003年、独 立行政法人通信総合研究所(現 NICT)に 入所。 2006年よりインシデント分析セン ターNICTERを核としたネットワークセキュ リティの研究開発に従事。博士(工学)。園田 道夫(そのだ みちお)〈右〉ナショナルサイバートレーニングセンター研究センター長大学院博士課程修了。2014年サイバー大学 IT 総合学部教授 を経て、2016年 NICT セキュリティ人材育成研究センター長、 2017年ナショナルサイバートレーニングセンター長に就任。 博士(工学)。れ、専用ツールも開発されているため攻撃者の裾野が広がっています。攻撃対象としては、相変わらずTCP23番ポート(Telnet、インターネット初期からある1NICT NEWS 2022 No.5

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