安田 真悟(やすだ しんご)サイバーセキュリティ研究所サイバーセキュリティ研究室 兼 サイバーセキュリティネクサス 研究マネージャー2013年NICT入所。ネットワークシステムの大規模検証、サイバー攻撃の検証、セキュリティトレーニング演習用各種模擬環境の構築・駆動技術の研究開発に従事するとともに、Hardening Project、Cyber colosseo、SecHack365などNICT内外のセキュリティ人材育成プロジェクトに従事。井上 大介(いのうえ だいすけ)サイバーセキュリティ研究所サイバーセキュリティネクサス ネクサス長/サイバーセキュリティ研究室 室長大学院博士課程後期修了後、2003年、独立行政法人通信総合研究所(現NICT)に入所。2006年よりインシデント分析センターNICTERを核としたネットワークセキュリティの研究開発に従事。博士(工学)。サイバーセキュリティの結節点を目指して本のサイバーセキュリティの現場では海外のセキュリティ技術を導入・運用する形態が主流となっており、セキュリティ自給率は危機的な水準です。セキュリティ技術を過度に海外依存する状況は日本の国際競争力の低下を招いており、2019年の内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)のサイバーセキュリティ研究開発戦略専門調査会*1でも、国産技術・産業の育成の重要性が指摘されています。■「データ負けのスパイラル」解決のための4つのCo-Nexusサイバーセキュリティ分野では、サイバー攻撃に関連した「データを大量に集める」こと、データを分析し対処する「人」と「技術」を育成することが必要です。AI/機械学習などの技術の発展に伴い、サイバーセキュリティの世界でもビッグデータを活用した分析技術の研究開発が盛んに行われています。しかし、セキュリティに関する実データは機微情報であるため共有が難しく、セキュリティ市場で大きなシェアを持つ海外セキュリティベンダが実データを大量に収集・保有し、それがビジネス優位性にもなっています。その結果、海外セキュリティ製品に依存している国内ベンダは、自社で実データを集める方法に乏しく、国産技術の研究開発をしたくても利用可能な実データがないため、研究開発が停滞する「データ負けのスパイラル」の悪循環に陥っています。この課題を解決するために、2021年4月にサイバーセキュリティネクサス(Cybersecurity Nexus: CYNEX)がサイバーセキュリティ研究所の中に新設されました。負のスパイラルを1つの問題解決で逆転するのは難しく、多面的に取り組む必要があります。CYNEXではサイバーセキュリティ研究室で培った研究開発成果、セキュリティ情報収集基盤と、ナショナルサイバートレーニングセンターで培ったセキュリティ人材育成のノウハウを結集し、国内民間企業や教育機関、政府機関などの結節点(Nexus)となるアライアンスを形成します。そして、4つのサブプロジェクト「Co-Nexus」を立ち上げ(図1)多面的な活動を並行して実施し、我が国のサイバーセキュリティ対応能力の向上とスパイラルの逆転を目指します。日FEATURE誰も取り残さないサイバーセキュリティCybersecurity for All図1 4つのCo-NexusNICT NEWS 2022 No.510
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