リモートセンシング技術特集Special Issue on Remote Sensing Technologies精緻な観測で環境を捉えるリモートセンシング技術いわゆる「ゲリラ豪雨」や、それによってもたらされる洪水や土砂崩れなど、近年の気象災害の増加は、「異常気象が常態化している」と言われるまでになってきている。そうした中、地上や上空から地球環境を観測・解析するリモートセンシング技術へのニーズは、ますます高まりつつある。その研究体制や今後の展望について、電磁波伝搬研究センターの石井守センター長及び同センターのリモートセンシング研究室 川村誠治室長に話を聞いた。■NICTにおけるリモートセンシングの研究体制――まずは、情報通信研究機構(NICT)の中での、リモートセンシング研究の位置づけと組織について教えていただけますか。石井 現在、NICTはICTという大きなくくりの中で、音声翻訳やサイバーセキュリティなど広い分野の研究を行っています。その中で最も歴史が古く、かつ現在でも必要性の高いテーマとして、「電波の伝わり方」を扱っているのが電磁波研究所です。 電波の伝わり方は自然の状況に大きく影響されます。もちろん、通信という用途に限れば、これらの影響は邪魔ものですが、逆に言えば、その影響を測れば自然の変化がわかる。それが、リモートセンシングが電磁波研究所において研究されている理由です。 現在、電磁波研究所には、電磁波標準研究センター、電磁波先進研究センター、電磁波伝搬研究センターの三つのセンターがあります。このうち、私たちの電磁波伝搬研究センターは、様々な自然条件が電波の伝わり方に与える影響を研究しています。この中に、川村室長が指揮を執っているリモートセンシング研究室、そして宇宙環境研究室の二つの研究室が置かれています。前者が主に気象、地表を計測する技術開発を行っており、後者は太陽活動の影響など、いわゆる「宇宙天気」を研究対象としています。石井 守(いしい まもる)<左>電磁波研究所 電磁波伝搬研究センター 研究センター長1993年大学院修了後、日本学術振興会特別研究員を経て1994年通信総合研究所(現 NICT)入所。超高層物理学、大気光学・電波観測などに関する研究に従事。総務省情報通信審議会専門委員。ISES 副議長、UN/COPUOS・ICAO・WDS-SC・SCOSTEP・URSI・ITU-R専門委員。地球電磁気・地球惑星圏学会評議員。博士(理学)。川村 誠治(かわむら せいじ)<右>電磁波研究所 電磁波伝搬研究センターリモートセンシング研究室 室長2003年大学院修了後、日本学術振興会特別研究員を経て2006年NICT 入所。レーダーリモートセンシングの研究に従事。博士(情報学)。1NICT NEWS 2022 No.2
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