牛腸 正則(ごちょう まさのり)電磁波研究所電磁波伝搬研究センターリモートセンシング研究室有期研究員博士(工学)研究者になりたいと思ったのはいつ?小学校の同級生と会ったときにふと言われました。「博士になりたいって言ってたね」と。嘘だと思いつつ卒業文集を見返したところ、なんと本当でした。知らぬ間に本願成就していたようです。今までで最大の失敗は?「最大の失敗」と言えるほどかはわかりませんが、博士課程で受給していた奨学金の免除申請を出しそびれ現在進行形で返済中です。最近はまっていることコーヒーを淹いれることが趣味です。長らく電動ミルを使っていたのですが、最近は手回し式に変えました。無心でゴリゴリと豆を挽いていると心が洗われていくようです。QAQAQA●経歴1993年新潟県にて誕生2016年新潟大学工学部情報工学科卒業2019年新潟大学大学院自然科学研究科博士課程在籍中、NICT入所2021年新潟大学大学院自然科学研究科博士課程修了現在に至る●受賞歴等2018年度/2019年度 電子情報通信学会 アンテナ・伝播研究専門委員会優秀論文賞2020 IEEE AP-S Japan Student Award私一問一答File 20たちの日常生活には地図をはじめ、様々な測量成果が利用されています。しかし、人間が歩き回って測量するには地球は広すぎます。そのため遠隔(リモート)から測量(センシング)するリモートセンシングが発展してきました。リモートセンシング機器のひとつであるレーダーは、送受信した電波が跳ね返ってくるまでの時間から距離を計測する装置です。直感的には電波と機械を用いた「やまびこ」です。航空機搭載合成開口レーダー(航空機SAR)は航空機に搭載されたレーダーと高度な信号処理を組み合わせることで地表を面的に可視化することが可能です。高高度から地表を観測できるため、広い領域を一度に観測可能であり、かつ航空機の迅速性を併せ持っていることが利点です。NICTでは2000年代から航空機SARの開発と地表観測を行ってきました。私の研究は航空機SARの観測データを用いた信号処理技術の開発と情報抽出です。特に現在は航空機SARの分解能を信号処理的に向上させる技術について研究を行っています。SARの分解能は「観測可能な最小単位」を表す指標で、この分解能が高いほど詳細に地表の様子を知ることができます。しかし分解能はレーダーの周波数帯域などによる限界が生じるため、向上させることは容易ではありません。そこで私の研究では、画像化したSARデータは一定の点拡がり関数を持つという特性を利用し、信号処理的に分解能を向上させる手法を開発しました。この手法を用いることで仮想的に2~3倍の周波数帯域幅を用いたSARデータ、すなわち実効的に2倍以上の分解能を達成できることが検証結果からわかっています。今後は開発した手法の詳細な検証とともに、実用化や改良を進めていきたいと考えています。SAR画像(左図)は解像度(画素サイズ)とは別に点拡がり関数(一定のパターン)を持ち、それによって分解能が決まる。提案手法では、この観測データと点拡がり問題の関係について逆問題を解くことで仮想的に分解能を向上させる航空機搭載合成開口レーダーによる地表観測と情報抽出13NICT NEWS 2022 No.2
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