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三浦 周(みうら あまね)ワイヤレスネットワーク総合研究センター宇宙通信研究室 主任研究員1998年郵政省通信総合研究所(現NICT)入所。衛星通信とアンテナの研究に従事。ATR出向を経て、現在、技術試験衛星9号機の通信ミッションの研究開発及びBeyond 5Gの宇宙通信の研究開発に従事。博士(情報科学)。衛星通信と5G / Beyond 5Gの連携GやBeyond 5Gにおける衛星通信の役割が注目されています。宇宙通信研究室では、衛星通信をはじめとする非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Networks)と5G / Beyond 5Gの連携の研究開発を進めています。本稿では衛星5G / Beyond 5G連携への期待と、Beyond 5G時代のネットワークのイメージ、衛星5G / Beyond 5G連携で解決が期待される社会課題、今後の展望として当研究室の活動について紹介します。■背景 従来から衛星通信は地球規模で広域にサービスができる特徴や地上通信インフラに比べて自然災害の影響を受けにくい特徴を持ち、放送サービスや通信サービス、非常災害時のテンポラリな通信回線などに利用されてきました。一方で、衛星までの伝送距離が大きく、地上通信に比べて通信速度や伝送遅延の制約があるため、地上の通信サービスとは互いに独立してネットワークが構築されていました。これに対して最近、衛星通信技術の進化や、5Gのネットワーク技術、標準化の進展を背景として、衛星通信をはじめとするNTNと5G / Beyond 5Gを連携することにより、従来にないサービスの登場や従来のサービスの大幅な改善が期待されています。■衛星5G / Beyond 5G連携への期待衛星通信と5G / Beyond 5Gの連携が期待される背景として3つのモチベーションが考えられます(図1)。1点目として、近年、衛星通信技術が進化しています。静止衛星を超マルチビーム化したハイスループット衛星の登場により高速大容量化が低コストで実現し、また多数の低軌道衛星群によるメガコンステレーション計画の登場で伝送遅延も大幅に低減します。端末も小型低消費電力化して大幅に地上系システムに近づきました。最近では成層圏プラットフォーム(HAPS:High Altitude Platform Station)等の無人航空機を通信プラットフォームに利用する動きもあり、空から宇宙までの空間の通信への利用が進んでいます。2点目として、5G技術を特徴づけるSDN(Software Defined Network) / NFV(Network Functions Virtualization)、ネットワークスライシング、オーケストレーションといったネットワーク技術を衛星系に展開することで5Gとの連携が効率よく実現できる可能性があり、欧州で官民共同プロジェクトが活発化しています。3点目として、通信サービス実現の過程で重要な標準化において、従来衛星通信は地上系の移動通信とは独立して標準化が行われていましたが5Gでは初めて衛星をはじめとするNTNの標準化が地上系の移動通信と同期して進められています。これによりNTNの標準化が進み、プラグ&プレイ化や通信チップの開発、サービス実現に向けた法整備等が進展することが期待されます。■Beyond 5G時代のネットワークBeyond 5Gにおけるネットワークは、宇宙から地上までが多層的に3次元的に接続される通信ネットワークが前提となります(図2)。地上系、船舶、ドローン、HAPS、静止/非静止衛星が連携して、地上、海、空、宇宙空間をシームレスに5スペースICT特集Special Issue for Space ICTNICT NEWS 2021 No.16

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