■海洋・宇宙ブロードバンド衛星通信ネットワーク基盤技術の研究開発次世代ブロードバンド通信衛星のシステムの概念設計を実施し、ユーザー当たり100 Mbpsの新たなブロードバンド、フレキシブルかつKa帯/光のハイブリッド衛星通信システムとして、技術試験衛星9号機(ETS-9)の計画策定へ貢献しました(図3)。ハイスループット衛星通信システムの研究開発を電波利用料受託研究の代表研究機関として推進し、ETS-9の通信ミッションである衛星搭載用固定マルチビーム通信機器の開発を完了するとともに、ユーザー利用実験に必要な衛星搭載用ビーコン送信機器(共通部)の研究開発を実施しました。また、ネットワーク統合制御地球局とゲートウェイ地球局(主局、副局、車載局)の基本設計を実施するとともに、周波数・エリア・RF–光フィーダリンク切替制御機能を総合的に模擬するシミュレータを開発し、高効率な運用制御技術について基本性能評価を実施しました(本号pp.8–9参照)。将来の搭載フレキシブルペイロードの基盤技術として、搭載デジタルビームフォーマ(DBF)アレー給電部の系統誤差補正方式を開発し有効性を確認しました。衛星搭載用フルデジタルペイロード技術の検討も実施しており、小型衛星のコンステレーションへ適用可能なフェーズドアレー技術の研究開発を実施しています。また、衛星通信の新たなユースケースとして期待されるIoT/センサネットワークの低速モデムの開発を推進しています。非常時の地上系通信ネットワークの輻ふく輳そう・途絶地域に対して柔軟・機動的にブロードバンド通信を提供するため、熊本地震(2016年4月)へ対応し、高森町にNerveNet等と連携した高速インターネット衛星(WINDS)回線を開設し災害時の通信確保に貢献し、各地の防災訓練にも参画し意見交換とシステム向上を行いました(図4、耐災害ICT研究センターとの連携)。また、WINDS衛星を用いた移動体のKa帯伝搬特性測定について、車載地球局移動中に受ける樹木等遮へい物の影響を測定し、標準化文書へ寄与しました。衛星通信の利用推進の取組として、衛星通信と5Gの連携の推進を目的に欧州宇宙機関(ESA)との日欧連携の衛星5Gトライアルの計画を立案し、NICTの委託研究課題として推進しています。さらに衛星通信–5G連携に関する国内19機関による検討会を立ち上げ、ユースケース、技術課題等の具体的検討を実施し報告書を公開しました。7月1日に設立された「スペースICT推進フォーラム」にて、衛星の5G / Beyond 5G技術分科会として検討が引き続き行われる予定です(本号pp.6–7参照)。■今後の展望NICTでは、公的機関として宇宙通信技術を中心とした世界初となる最新の研究開発を推進し、ITU-R、AWG、CCSDS等の標準化活動に貢献していきたいと考えています。また、宇宙に関心を持つ異業種企業を含めた民間コミュニティの形成と異業種連携を促進する「スペースICT推進フォーラム」の活動をサポートし、将来の日本の通信放送衛星等の研究開発や実証計画の方向性を示し、日本の競争力強化に資するよう貢献していきます。図1 世界最速レベルの10 Gbps級衛星搭載用の超高速先進光通信機器(HICALI)図2 SOTAを用いた世界初の衛星–地上間における光通信と量子暗号基礎実験の成功図3 次世代ブロードバンド通信衛星のシステムイメージ図4 熊本地震の際に設置したWINDS用地球局5NICT NEWS 2021 No.1
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