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豊嶋 守生(とよしま もりお)ワイヤレスネットワーク総合研究センター宇宙通信研究室室長1994年郵政省通信総合研究所(現NICT)入所。ETS-IVによる光衛星通信実験に従事し、その後宇宙開発事業団(現JAXA)出向、ウイーン工科大学在外研究を経て、OICETS、SOTA、ETS-9等の衛星搭載通信機器の研究開発や宇宙実証実験に従事。博士(工学)。宇宙通信研究室 第4期中長期計画の取組状況々に打ち上がる小型衛星が、これまでの宇宙開発を変えようとしています。高度化する地球観測衛星、多数の小型衛星による通信サービス、多種多様の超小型衛星など、宇宙開発がより我々の生活の身近な存在になりつつあります。当研究室では、地上から宇宙に至るまでを統合的にとらえ、いつでもどこでも誰とでも通信が可能で、高速化・大容量化・広域利用を実現する、光と電波を利用した衛星通信技術の研究開発を進めています。■グローバル光衛星通信ネットワーク基盤技術衛星通信の大容量化への期待の高まりや周波数資源逼ひっ迫ぱくの解決にこたえ、世界最速レベルの10 Gbps級の地上–衛星間光データ伝送を実現するため、衛星搭載用の超高速先進光通信機器(HICALI)の開発を推進しました(図1)。また、NICT光地上局に精追尾機構や大気ゆらぎの影響を軽減するための補償光学システムを開発し整備を進めており、光フィーダリンクの基礎技術を確立する予定です。光衛星通信の通信品質向上を目指し、50 kg級小型衛星に搭載した小型光トランスポンダ(SOTA)を用いた衛星–地上間光通信実験を成功裏に実施し、さらにSOTAと光地上局間で、光子レベルで送受信を行う量子通信の基礎実験に世界で初めて成功し、2017年7月にNature Photonics誌に論文が掲載されました(図2)。また、国内外の企業や研究機関とグローバルに連携し、衛星–地上間の光通信実験を推進してきました。特に、国際宇宙ステーション(ISS)に搭載したSONY CSLが開発した光衛星通信端末(SOLISS)と、NICT光地上局間で2020年4月に双方向光通信実験に成功しました(グッドデザイン賞受賞。本号p.12参照)。将来的には、小型地球観測衛星からのデータ伝送や、衛星コンステレーションにおける衛星–衛星間や衛星–地上間の光通信に活用できます。さらに、超小型衛星キューブサットや無人航空機に搭載可能な超小型光通信機器の研究開発に着手しており、キューブサットで10 Gbps級のデータ伝送を目指しています(本号pp.10–11参照)。グローバルな情報セキュリティ確保は将来にわたる重要な社会課題ですが、それの課題を解決する衛星量子暗号技術に関する研究開発を実施しています。総務省直轄委託研究において、8トントラックを改造した可搬型光地上局を完成させ、追尾精度等の評価実験を実施しており、さらに量子暗号用の光通信ターミナルについて、共同研究機関と連携し開発を実施しています(未来ICT研究所量子ICT先端開発センターとの連携)。また、東北大学が開発した超小型理学観測衛星ライズサット(RISESAT)が2019年1月に打ち上げられ、NICTが開発した700gの超小型光送信器(VSOTA)が搭載され、各種実験を実施しています。その一環として、正確な軌道や姿勢情報が得られていない人工衛星を、ターゲットと見立てたレーザ測距実験に成功しています。この技術は、宇宙状況把握(SSA)に活用することが可能です。次スペースICT特集Special Issue for Space ICTNICT NEWS 2021 No.14

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