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──宇宙の商用利用が活発になってきていますが、日本の民間宇宙開発の状況は?門脇 民間レベルの宇宙開発をバックアップするために日本でも宇宙活動法が制定され、2018年11月から完全施行されました。これが宇宙の商業利用に関する関心を高めたと言えます。宇宙においては様々な活動が想定されますが、それらを実現するための重要な技術の一つが衛星通信技術です。NICTは衛星通信技術を長年研究しており、膨大な技術の蓄積と知見を持っています。これらの研究成果と開発力を活いかし、日本の宇宙開発に貢献していけるのではないかと考えています。 ただし、そのためには国立の研究機関だけでは十分でなく、民間の優れた技術や人材が必要となります。そこで、宇宙通信分野を中心とし、今後の研究開発をどのように進めていくかを自由にオープンに議論する場を作りたいと考えて、スペースICT推進フォーラムを設立いたしました。──正に宇宙新時代と言えますが、目標の実現に当たってはどのような技術が必要とされるのでしょうか。■宇宙新時代を支える技術門脇 地上系の無線ネットワークは5Gの時代に入りましたが、現時点で5Gは、あくまでも地上のみです。これを、衛星通信を使って三次元に展開していきたいと考えています。 上空に向かって、ドローン・飛行機・成層圏プラットホーム・低軌道衛星・静止衛星と上方に拡張していく立体的な5Gネットワークの構築です。将来は、月・火星との通信も視野に入れたいと考えています。 もう一つはIoT*1(モノのインターネッ 宇宙開発が国家事業から民間へと移りつつある。この流れは、ここ10年ほどで加速している。アメリカではスペースX社が、ファルコン9/クルードラゴンでISSに飛行士を送る。小型の衛星を数万基打ち上げ、衛星インターネットを構築しようという計画も持つ。こうした宇宙開発をめぐる激動の時代の中で、日本も宇宙の民間利用に向けて本格的に動き出した。この流れを技術面からバックアップし、更に加速しようというのが、NICTが大学・企業と共に設立したスペースICT推進フォーラムだ。2020年7月に発足したばかりの同フォーラム副会長で、宇宙通信技術の草創期から研究に携わってきたNICTの門脇直人理事に話を聞いた。門脇 直人(かどわき なおと)NICT理事 1986年郵政省電波研究所(現NICT)入所。その後、豪州AUSSAT社客員研究員、ATR適応コミュニケーション研究所、NICTワイヤレスネッ トワーク研究所長、執行役等を経て現職。博士(情報科学)。宇宙通信技術の革新で、陸・海・空・宇宙を広帯域でシームレスに結ぶスペースICTの新時代に向けた動きは…Special Issue for Space ICTスペースICT特集NICT NEWS 2021 No.12

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