電子走査アレイアンテナのメリット小さな航空機でもインターネット利用を可能にする薄型電子走査アレイアンテナ大倉 拓也(おおくら たくや)マートフォンやタブレット端末の急速な普及に伴い、大型航空機等ではWi-Fi通信を活用した機内インターネット接続サービスの普及が進んでいます。また、2020年10月に発表されたボーイング社の民間航空機および防衛宇宙市場の今後の動向を示す「ボーイング市場予測 (Boeing Market Outlook, BMO)」によると、民間航空機数は今後20年で25,900機から48,400機に増加するとされ、さらに機種別の需要予測では、リージョナル機(90席以下)やナローボディ機(90席以上)の小・中型航空機の需要がおよそ35,000機となると見込まれています。これらの航空機においても大型機と同様にブロードバンドサービスを提供するために、航空機向けの衛星通信需要が大きく増加することが想定されます。そこで、衛星通信システムの高速化と大容量化のために周波数の有効利用が必須の課題となっており、航空機に搭載する衛星通信アンテナの高性能化が求められています。 アンテナの高性能化には一般的にはアンテナ開口面積を大きくする必要がありますが、従来の機械駆動型アンテナではアンテナが立体的に大きくなってしまうため、小・中型航空機への搭載は困難となっています。そこで、薄型電子走査アレイアンテナの研究開発により、航空機への搭載性を損なわずにアンテナ性能を改善する技術を確立し、変調方式を多値化することで周波数利用効率を30 %以上改善し、周波数の有効利用に資することを目的としています。ワイヤレスネットワーク総合研究センター宇宙通信研究室研究員博士(工学) 今年度末までにアレイアンテナの一部を切り出したサブアレイアンテナについて、実際に航空機に搭載しアンテナの性能評価を実施する予定で、無事に目標を達成できれば、航空機におけるインターネット環境の大きく変える「最初の一歩」となると考えています(本研究は、総務省「電波資源拡大のための研究開発(JPJ000254)」の「小型旅客機等に搭載可能な電子走査アレイアンテナ(AESA)による周波数狭帯域化技術の研究開発」で実施しています)。研究者になってよかったことは?最先端の技術に触れられて、「こんなことができたらいいな」を実現するための最初の一歩になれることです。学会・実験等で色んな場所に行けること(ご当地グルメが楽しみの一つ)もあります。生まれ変わったら?(地球外生命体は存在している派なので)宇宙人になりたいです。宇宙を自由に旅して、人類が観測できていない宇宙空間を見てみたいです。宇宙人から地球がどう見えるのか知りたくもあります。研究者志望の学生さんにひとこと学生時代、研究室に配属されて「研究って面白い」と虜になり、博士号を取って研究者になろうと決意しました。研究に魅力を感じているならその気持ちを大切にぜひ研究者になってください。QAQAQA●経歴1990年岡山県にて誕生2012年横浜国立大学工学部電子情報工学科卒業2013年横浜国立大学大学院工学府物理情報工学専攻博士課程前期2年修了2016年横浜国立大学大学院工学府物理情報工学専攻博士課程修了後、マイクロウェーブファクトリー株式会社入社2017年NICT入所、現職に至る●受賞歴等2020年 電子情報通信学会2019年度(第82回)学術奨励賞受賞ス一問一答13NICT NEWS 2021 No.1File 14
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