国際宇宙ステーション–NICT光地上局間の双方向光通信実験成功による2020年グッドデザイン賞受賞このたび、NICTが取り組んだ共同研究である「宇宙用小型衛星光通信装置の開発および宇宙実証「SOLISS」プロジェクト」が、公益財団法人日本デザイン振興会が運営する「2020年度グッドデザイン賞」を宇宙航空研究開発機構(JAXA)、ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL)、リコー及びNICTで共同受賞いたしました。 「SOLISS」プロジェクトにおいて、NICTはSony CSLと共同して国際宇宙ステーション(ISS)–NICT宇宙光地上局間のレーザ光を使った双方向光(衛星)通信を実証しました。光衛星通信の特徴は、電波による衛星通信と比べて、はるかに高速・大容量の通信が実現できることです。NICTでは1980年代から光衛星通信システムの研究開発を先導してきました。宇宙通信分野は、従来、国家規模の機関主導による研究開発が主流でしたが、近年では民間企業主導による開発が世界的に活発になってきています。アメリカのスペースXがNASAの商業乗員輸送開発(CCDev)計画の下で、初の有人飛行に成功したことがその一例です。 NICTでは研究開発のみならず、その成果を広く社会へ実装していくためにオープンイノベーションを推進しています。その活動の一環として、NICTとSony CSLは、同社とJAXAが共同開発した「SOLISS」とNICT宇宙光通信地上局との間の双方向光通信実証に向けて2018年から共同で研究を実施してきました。NICTが保有している衛星搭載用光通信ターミナルの開発技術を基にした知見を提供し、「SOLISS」軌道上実証試験に必要な計測や実験を共同で行ってきた結果、2020年3月11日にNICT光地上局と「SOLISS」との間で100 Mbpsの双方向光通信リンクを確立し、Ethernet経由での高精細度(HD)画像データ伝送に成功しました。写真はISS「きぼう」船外実験プラットフォームに設置した「SOLISS」から伝送され、NICT光地上局にて受信された画像データです。本成果は、小型衛星搭載用の光通信機器としてEthernetによる通信を実現した世界初の事例ともなりました。 本実験の成功は、NICTが光衛星通信システム開発の知見提供及び光地上局の実験運用に関連した技術支援を行い、JAXAが「SOLISS」の打上げ及びISSでの軌道上運用を支援しながら、Sony CSLが通信試験を実施した結果となります。このような柔軟な研究開発の枠組みを作り上げ、公的研究開発機関の知見や施設を活用し、民間企業の持つ優れた技術とスピード感を合わせることで、従来の宇宙開発にない短期間で機能・性能実証された実例として評価されました。 NICTでは、今後も光衛星通信技術の先進的な研究開発を実施しつつ、日本における宇宙通信技術力強化に貢献できるようにスペースICTのオープンイノベーション推進をしてまいります。最後になりましたが、今回の実証実験及びグッドデザイン賞受賞にあたり、関係機関の皆様の協力に感謝します。研究員 宗正 康ワイヤレスネットワーク総合研究センター 宇宙通信研究室 写真 小型光通信実験装置「SOLISS」に搭載されている視野360°のモニタカメラで撮影された高精細度(HD)画像。右側がSOLISS光通信部で、左側が次世代ハイビジョンカメラ(HDTV-EF2)。12NICT NEWS 2021 No.1
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