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カラスコ−カサド アルベルトワイヤレスネットワーク総合研究センター宇宙通信研究室研究員2015年マドリード大学及びスペイン国立研究所にて博士課程を修了後、同年NICT入所。宇宙光通信と量子暗号の研究に従事。現在、地上波リンク・ドローン・キューブサットから大型静止衛星に至るまで、多様なシナリオにおける光通信ミッションに携わる。博士(工学)。新しい世界を開くキューブサットへの超大容量光通信技術小型衛星キューブサットの技術は過去10年間で大きな発展を遂げてきました。小型衛星の開発にかかる費用も手ごろになり、小型衛星の利用者数は大幅に拡大しており、その傾向は今後も確実に継続していくと予想されます。今後のキューブサットは大学などの教育目的で短期間のミッションから、何百万人もの人々の通信をサポートするメガコンステレーションに至るまで、様々なシナリオで活躍する予定です。キューブサットの超大容量光通信技術が、新しい世界を開拓すると期待されています。■ キューブサット概要キューブサットは外形寸法が10×10×10 cmサイズの基本ユニット(1U)から構成される超小型衛星で、2個の基本ユニットの場合を2U、3個の基本ユニットの場合を3U…と呼び、実際に打ち上げられたキューブサットの約80%は1Uから3Uのサイズです。小型衛星技術がモジュール開発されたことで宇宙へのアクセスが容易になり、この数年間で1,000機以上のキューブサットが打ち上げられ、その数は年々増加しています。キューブサットは技術的に成熟度が高いレベルに達しており、教育目的や簡単な実験だけでなく、本格的なミッションにも使用することができる段階になってきました。しかし、依然として地上と衛星の通信は電波(RF)通信に依存しており、通信速度は高々「Kbps」クラスで、周波数帯域は既に逼ひっ迫ぱくしているため地上へのデータ送信要求の増加に対応するには難しい状態にあります。この課題を解決する有力な技術である光通信は、搭載する光通信端末のサイズ、質量、電力を低く抑えながら、伝送速度が数桁向上する可能性を持っています。■キューブサットによる高速光通信の役割前述したとおり、キューブサットと地上との通信で使用される基本技術はVHF/UHFであり、代表的な通信速度は約10 Kbit/sです。 大きな地上アンテナを使用することで、Sバンドは数Mbit/s、Xバンドは数百Mbit/sに到達できますが、キューブサットのサイズ、質量、電力の制約を考えると、RF技術により劇的な通信速度の改善をもたらすのは難しいところです。さらに、既に混雑している周波数帯域は、今後数年間に打ち上げられる膨大な数の衛星をサポートするのは困難な状況になっています。一方、キューブサットの光通信の潜在的な価値は非常に高く、光通信の真の可能性は通信速度を上げ、サイズ、質量、電力を削減できるだけでなく、将来的に更なる高速化の余地があることです。キューブサットや小型衛星の伝送容量の増加から恩恵を受ける可能性のあるアプリケーションの範囲は非常に広く、通信ネットワーク、宇宙観測、地球監視、防災、深宇宙探査、モノのインターネット(IoT)デバイスへの接続、基礎及び応用研究、教育などが含まれます。これらすべての分野でキューブサットを利用する計画は既にありますが、高速通信が利用可能になると、更に新しいアプリケーションを考えることができます。例えば、メガコンステレーションは、現在の費用の数分の1程度で展開ができ、遠隔地への高速通信を実現し、遅延を大幅超スペースICT特集Special Issue for Space ICTNICT NEWS 2021 No.110

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