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ポーズを自由に変えられる “数値人体モデル用ソフトウェア” の公開

~ 無線通信機器の使用状況の「電波ばく露評価」が可能に ~

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2012年1月25日

  独立行政法人 情報通信研究機構(以下「NICT」、理事長:宮原 秀夫)は、電波と人体との相互影響を調べるために開発した、解剖学的構造を有する日本人数値人体モデルのポーズ(姿勢)を自由に変えられるソフトウェアを非営利の研究目的に対して無償公開します。数値人体モデルと今回公開するソフトウェアを利用することで、多様化している無線通信端末の使用環境を模擬した評価が可能になります。また、放射線の被ばく線量評価など様々な分野での利用も可能です。

背景

急速な無線通信技術の進歩に伴って、一般の人々のごく近くで「電波」が利用され、その利用形態も多様化しています。このような環境の中、無線通信機器等から発生する電波が人体内部でどのように振る舞い、影響を及ぼすかをコンピュータ上で正確にシミュレーションするため、NICTは、人体の解剖構造を詳細に模擬した立位の「数値人体モデル」を開発し、公開しています(図1)。

「数値人体モデル」(2 mmの立方体ブロック600万個以上で構成、51種類の人体組織・臓器を有する日本人成人男女の人体モデル)の詳細は、下記のWebページをご覧ください。
https://emc.nict.go.jp/bio/model/model01_1.html

ポーズ(姿勢)変更ソフトウェアの概要
数値人体モデルのポーズ(姿勢)変更例
数値人体モデルのポーズ(姿勢)変更例

今回公開する「ポーズ(姿勢)変更ソフトウェア」には、自由形状変形(Free-form Deformation)法を応用利用しました。これにより、数値人体モデルの体表面と骨の形状を確認しながら、インタラクティブな操作でポーズ(姿勢)を自由に変更することができます(図2)。様々なポーズ(姿勢)のモデルを利用することで、無線通信端末の使用時に「電波」が人体内部でどのような振る舞いをするかを、より高精度に推定することが可能です。

数値人体モデルと本ソフトウェアは、放射線の被ばく線量評価や自動車安全のための傷害解析など、他分野でも活用できます。

今後の展望

「ポーズ(姿勢)変更ソフトウェア」の公開は、平成24年2月1日から開始します。公開条件、利用申請方法等については、下記のWebページをご覧ください。
https://emc.nict.go.jp/bio/data/index.html

現在公開中の妊娠女性モデルや現在開発中の小児モデル等においても、本ソフトウェアを対応させる準備を進めており、でき次第、順次公開していく予定です。


【参考文献】

Tomoaki Nagaoka and Soichi Watanabe, “Postured voxel-based human models for electromagnetic dosimetry,”Phys. Med. Biol., vol.53, pp.7047-7061, 2008.


http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19015577

http://iopscience.iop.org/0031-9155/53/24/003/pdf/0031-9155_53_24_003.pdf#search='Postured voxelbased human models for electromagnetic dosimetry,'

【過去の報道発表】

• 平成13年4月26日
我が国初の全身数値モデルを共同開発 
— 様々な電波利用状況に対してきめ細かな安全性評価が可能に —
https://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/010426/010426.html

• 平成16年11月10日
日本人平均成人男女の数値人体モデルデータベース公開のお知らせ
https://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h16/041110-2/041110-2.html

• 平成18年3月28日
数値人体モデルデータベースの有償公開を開始します。
https://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h17/060328/060328.html

• 平成18年8月24日
世界初の妊娠女性数値モデルを共同開発 — 電波の安全性評価に貢献 —
https://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h18/060824/060824.html

• 平成20年7月4日
日本人妊娠女性の全身数値モデルデータの無償公開
~ 胎児に対する様々な電波ばく露評価に利用可能 ~
https://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h20/080704/080704-2.html

• 平成21年12月21日
妊娠女性全身数値データの民間への公開を開始
~ 世界初、妊婦と胎児の組織や臓器を忠実に再現 ~
https://www2.nict.go.jp/pub/whatsnew/press/h21/091221/091221.html

補足資料

図1 日本人成人男女の数値人体モデル (左:正面からの断層表示、 右:ボリュームレンダリング表示)
図1:日本人成人男女の数値人体モデル ( 左:正面からの断層表示、 右:ボリュームレンダリング表示

図2: 数値人体モデルのポーズ(姿勢)変更例
図2: 数値人体モデルのポーズ(姿勢)変更例

図3: ポーズ(姿勢)変更ソフトウェアの操作画面
図3: ポーズ(姿勢)変更ソフトウェアの操作画面



用語 解説

電波が人体に及ぼす影響については、50年以上にわたって世界各国で研究が行われている。その膨大な研究成果によって、携帯無線端末等の電波については、熱作用に基づいた電波防護指針が定められている。電波により生じる人体の熱作用の評価には、体内への電力の吸収量が指標として用いられ、数値人体モデルを利用したコンピュータシミュレーションによって、正確かつ詳細な評価を行うことが必要である。また、人体が通信機器のアンテナ特性等に及ぼす影響の評価にも使うことができる。

人体(組織・臓器)の形状を、微小な要素(本モデルでは一辺が2 mmの立方体ブロック)の集合体として表現したもの。各微小ブロックには、その部位に対応する組織・臓器名が与えられており、その組織・臓器に対応する電気定数を与えることで電磁界解析シミュレーションに用いることができる。また、各組織・臓器に他の物性値を与えることで、放射線の被ばく線量評価や自動車安全のための傷害解析など、幅広い研究分野で利用可能である。

自由形状変形法 【Free Form Deformation】

数値人体モデルの各部位の周囲を囲む格子を設定し、その格子の制御点を動かすことで、数値人体モデルの各部位を滑らかに変形できる。

ボリュームレンダリング表示 【Volume rendering display】

3次元ボリュームデータを可視化するための表示方法。ボリュームレンダリングで表示ではボリュームデータの内部を半透明で表示できるため、数値人体モデルの内部組織構造も確認することができる。



本件に関する 問い合わせ先

電磁波計測研究所 電磁環境研究室

渡邊 聡一、長岡 智明
Tel: 042-327-7486
Fax: 042-327-6675
E-mail:

取材依頼及び広報 問い合わせ先

広報部 報道担当

廣田 幸子
Tel: 042-327-6923
Fax: 042-327-7587
E-mail: