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世界初、アジア諸国をインターネットで結ぶ音声翻訳システムを実現

〜 旅行会話を中心としたアジア8言語間携帯型音声翻訳システムを実現 〜

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2009年7月29日

独立行政法人情報通信研究機構(以下「NICT」という。理事長:宮原 秀夫)のMASTARプロジェクト(プロジェクトリーダ:中村 哲)は、音声翻訳の多言語展開を目指しASTAPにおいて音声翻訳を構成する機能モジュールをインターネットで相互接続するための標準化を進めてきました。この度、アジア音声翻訳先端研究コンソーシアム(以下「A-STARコンソーシアム」という。代表:NICT)と共同で、ネットワーク型音声翻訳システムの開発に世界で初めて成功しました。今回は、アジア圏での旅行会話を対象に、8言語間の音声翻訳の接続実験を行います。対応言語は、日本語、中国語、韓国語、タイ語、インドネシア語、マレーシア語、ベトナム語、ヒンディー語、英語で、地名などの固有名詞を含んだ旅行会話にも対応しており、今後、対象言語を、さらに拡張することが可能です。

背景

現在、NICTでは、内閣府、総務省と共同で社会還元加速プロジェクト「言語の壁を越える音声コミュニケーション」の一つである音声翻訳技術の研究開発を進めています。その一環として、ASTAPにおいて音声翻訳を構成する機能モジュールをインターネットで相互接続するための標準化を進めてきました。今回、A-STARコンソーシアムと共同で、標準化案に従ってアジア8カ国言語間の音声翻訳を可能にするネットワーク型音声翻訳システムの開発に世界で初めて成功しました。

今回の成果

本システムでは、現在NICTが開発している音声翻訳用STMLウェブサーバを介し8カ国の研究機関が音声認識、機械翻訳、音声合成といった音声言語の要素技術をインターネット上で提供します。これまでNICTが開発した音声翻訳システムでは、対象言語が日本語、英語、中国語に限定されていましたが、A-STARコンソーシアムとの共同開発により対象言語がアジア圏に拡大されました。ユーザーが利用するアプリケーションは携帯型モバイル端末にインストールされているため、誰でもどこからでも簡単に利用でき、最大4人のユーザーが同時に音声翻訳を使って会話できます。また、基本的な旅行会話文に加えて、アジア諸国の観光名所等の固有名詞にも、8カ国語間の音声翻訳対応をしています。

今後の展望

今後は、ASTAPのSNLP専門委員会(EG)における標準化を進め、さらに多言語展開を進めます。

アジア音声翻訳先端研究コンソーシアム(A-STAR)参加メンバー

アジア音声翻訳先端研究コンソーシアム(A-STAR)参加メンバー
図1:アジア音声翻訳先端研究コンソーシアム(A-STAR)参加メンバー

サーバーリストとクライアント側ユーザーインタフェース

サーバーリストとクライアント側ユーザーインタフェース
図2:サーバーリストとクライアント側ユーザーインタフェース

ネットワーク型音声翻訳システム
〜 複数ユーザーがぢこからでも同時にそれぞれ別のアジア言語でコミュニケーションをとることが可能に 〜

図3-a:ネットワーク型音声翻訳システム イメージ図
図3-a:ネットワーク型音声翻訳システム イメージ図

ネットワーク型音声翻訳システム
〜 複数ユーザーがぢこからでも同時にそれぞれ別のアジア言語でコミュニケーションをとることが可能に 〜

図3-b:ネットワーク型音声翻訳システム イメージ図
図3-b:ネットワーク型音声翻訳システム イメージ図 
いずれも『どこがいちばんよかったですか』の意

クライアント端末と翻訳サーバー間の相互作用

図4:クライアント端末と翻訳サーバ間の相互作用
図4:クライアント端末と翻訳サーバ間の相互作用

 

用語解説

ASTAP

アジア・太平洋電気通信標準化機関(Asia-Pacific Telecommunity Standardization Program)。域内にお
ける電気通信標準化活動の促進・調整を目的として、アジア・太平洋電気通信共同体(APT)が1998 年2 月
に設立した。事務局はバンコク。

アジア音声翻訳先端研究コンソーシアム(A-STAR: Asian Speech Translation Advanced Research Consortium)

アジアにおけるネットワーク型音声翻訳システムの実現に向けて2006 年6 月に設立。メンバーは、NICT、株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、韓国のETRI (Electronics and Telecommunications Research Institute)、タイのNECTEC (National Electronics and Computer Technology Center)、インドネシアのBPPT(Agency for the Assessment and Application of Technology)、中国のNLPR-CASIA (National Laboratory of Pattern Recognition, Institute of Automation, Chinese Academy of Science)、インドのCDAC (Centre for Development of Advanced Computing)、ベトナムのIOIT(Institute of Information Technology, Vietnamese Academy of Science and Technology)及びシンガポールのI2R(Institute for Infocomm Research)
の8 カ国の研究機関。 アジア言語のコーパス収集、共通の音声認識及び翻訳辞書の作成、ウェブサービスによるアジア言語向け音声翻訳モジュール、接続方法について、共同研究を行っている。

STML (Speech Translation Markup Language)

多地点に分散したサーバで、音声翻訳の要素機能をWeb サービスとして提供し、必要に応じてクライアントがWeb サービスを利用するという方法によって多言語音声翻訳を実現するためのマークアップランゲージ。H20 年度まで(株)国際電気通信基礎技術研究所で実施した文部科学省 科学技術振興調整費 アジア科学技術協力の戦略的推進(地域共通課題解決型国際共同研究)課題名:「アジア言語の壁の克服にむけた音声翻訳共通基盤の構築に関する研究開発」を、現在NICT において継承し、推進している。

STML ウェブサーバ

STML の仕様に基づいて、音声翻訳サービスを提供するウェブサーバ。

音声翻訳の要素技術

本システムでは、ユーザーがシステムに話しかける言葉を認識するための音声認識技術(ASR:Automatic Speech Recognition )、認識された言語を相手の言語に翻訳するための機械翻訳技術( MT:Machine Translation)、そして翻訳された言語を相手の国の言葉で出力するための音声合成技術(TTS:Text to Speech Synthesis)が導入されている。音声認識は8 カ国語(日本語、中国語、韓国語、タイ語、インドネシア語、マレーシア語、ベトナム語、ヒンディー語)、音声合成は9 カ国語(上記言語に英語を追加)、機械翻訳は72対の言語の組み合わせに対応する。

SNLP 専門委員会(EG)

Speech and Natural Language Processing Expert Group(音声・自然言語処理専門委員会)。

ASTAP の専門委員会のひとつ。主にネットワークを介した音声翻訳とアジア言語資源の標準化活動に取り組む。NICT のMASTAR プロジェクトリーダである中村哲上席研究員が委員長を務める。

 

本件に関する 問い合わせ先

知識創成コミュニケーション研究センター
音声コミュニケーショングループ
中村 哲 上席研究員

Tel: 0774-95-1370
E-mail:

広報関係 お問い合わせ先

総合企画部 広報室
報道担当 廣田 幸子

Tel: 042-327-6923
Fax: 042-327-7587
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