• 印刷
平成29年度委託研究追跡評価結果(概要)
採択
番号
研究開発課題名 研究
期間
(年度)
受託者
(◎印:
代表研究者)
研究期間終了後の経過 主な評価コメント
139イ 広域加入者系光ネットワーク技術の研究開発

課題イ 適応ネットワーク構成技術
H21
|
H23
◎沖電気工業株式会社
・平成24~26年度:総務省委託研究「超高速・低消費電力光ネットワーク技術の研究開発」課題Iに考え方を展開し、TWDM-PONを開発した。
・平成27年度以降:上記開発のTWDM-PONをベースに有無線連携のネットワーク仮想化の研究開発を進めている。多重技術は異なるが、状況(用途)に応じてOLTとONUの物理接続をフレキシブルに変更するという考え方を展開している。
光アクセス市場の進展が当初より遅れたこと、OCDMによる多重方式が当初期待されたようには普及しなかったため、製品化・実用化等へは活用できておらず、また、標準化の提案・副次的な利活用もされていないのは残念である。このため、成果や波及効果および活用状況は極めて限定的であることは理解できる。ただ、そのような状況においても、本研究の考え方自体は次の新たな研究開発へ展開され、TWDM-PONを開発してその研究は続けられている。
142 情報通信・エネルギー統合技術の研究開発 H21
|
H25
◎国立大学法人京都大学
・本委託研究により開発した電力パケット伝送システムのモデル化について、「電力パケットによるエネルギー表現の漸近的性質」と題する論文を電子情報通信学会和文論文誌(平成26年9月)に発表し、平成27年度電子情報通信学会論文賞、および最優秀賞である喜安善一賞を受賞した(平成27年6月)。
・本委託研究により得られた知見を基に、データ欠損時の対策や通信障害時の自動診断機能などをHEMS商品に搭載している。
本委託研究部分に限定した評価になるが、研究成果に基づく学術的な貢献や継続した研究実績など、相応の役割は果たしつつある。他方、実用化、幅広い社会実装に関しては、残念ながら未達成と言わざるを得ない。AIを活用したスマートスピーカやロボットなどのホームゲートウェイ構成が急激に変化する中で、これらの潮流を捉えた研究開発に本成果が継承/展開されることを期待する。
国立大学法人神戸大学
大和ハウス工業株式会社
株式会社エネゲート
株式会社トランス・ニュー・テクノロジー
143イ2 革新的な三次元映像技術による超臨場感コミュニケーション技術の研究開発

課題イ 三次元映像通信・放送のための中核的要素技術

副題 インテグラル立体コンテンツ生成のための要素技術の開発
H21
|
H23
◎日本放送協会
・将来の立体テレビの実用化に向けた研究開発において、研究を継続している。NHK技研で実施しているインテグラル立体テレビなどの研究開発に展開されている。
・パースペクティブの誇張技術は技術移転先が平成24年度に製品化。現在は製品実用フェーズで、アニメーション制作支援ツールとして使用されている。
・本プロジェクトの改良特許が、平成28年関東地方発明表彰の発明奨励賞(関東)を受賞。
NHKでは技研公開でプロモーションをされるなど立体テレビの実現に向け長年取り組まれており、その点で、このプロジェクトの位置づけと成果は、評価はできる。技術的には着実に進歩はしているが、より大きな成果をその時点時点であげるには、明確なコンテンツを定め、このための技術仕様(ディスプレイ仕様、圧縮率等)を定めてシステム的な研究を進める必要があると考える。
メーカの日立製作所がディスプレイ開発撤退という決断を行ったため、主目的で社会へ利便性等を与えられてはいない。しかし、「パースペクティブの誇張技術」が、製品化につながっている点は高く評価したい。
国立大学法人東京大学
株式会社日立製作所
144 マルウェア対策ユーザサポートシステムの研究開発 H21
|
H23
◎株式会社日立製作所
・本研究開発で得られた技術を基に、未知マルウェア・正規ツールを悪用した標的型攻撃に対する検知技術を開発し、製品化した。また、販売中の標的型サイバー攻撃の拡散を検知するソリューションの設計段階で、本研究成果を活用した。委託研究終了後に、マルウェア解析・検知を高速・高精度化する手法、および標的型攻撃を検出する手法を考案。研究成果は、情報処理学会論文誌(3件)および国際会議(IEEE ICC 2016, IEEE ISCC2017、NBIS2016)に掲載。
委託研究終了後に、その成果や発展させた技術が、2つの製品の一部として実用化されるとともに、継続的な活用や発展に繋がっていることから、全体として有意義な研究であったと言える。加えて、成果を新たな技術に発展させ、学術的な貢献も継続的に行われている。標準化については、委託研究終了後の進捗や展開がないものの、この点については、まずは終了時に目標を達成している点をもって一定の評価とすることができると考える。
新たな脅威の増加や、IoTデバイス等の保護対象の増加への対応等にも課題があるという認識を示しており、本研究課題の成果や知見の更なる活用に期待したい。
KDDI株式会社

追跡評価は、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」に基づき、委託研究終了後、数年経過してから(今回は3年後と5年後)、その波及効果や副次的成果等の把握、制度の改善等のために行う評価である。平成29年度追跡評価は、研究成果の実用化・標準化等が進展した社会的インパクトの大きさや、委託額等を考慮し、平成23年度と平成25年度に終了した研究開発課題のうち、4件を選定した。外部有識者による評価は、研究期間終了後の成果展開等状況調査を基にして実施した。